本日のお悩み:デイサービスで盛り上がる話題を教えてください!
高齢者にどんなネタがウケるのか、どういう話題だと楽しんでもらえるのか教えてください。
専門家が考える解決策4選!
2.羽吹 さゆり 先生「思い込みをなくし、個別性をもって対応しましょう」
3.古畑 佑奈 先生「オンラインやVRも活用してみましょう!」
4.脇 健仁 先生「具体的な会話のきっかけを解説します!」
1.高齢者に「何を話せばよいか」ではなく、「何を聞けばよいか」考えましょう
■回答者/専門家

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
デイサービスで勤務していると日替わりで利用者さんは変わりますし、新聞に毎日目を通していて社会情勢に詳しい利用者さんもいるため、話題が難しくてうまく返せない…。
また、コミュニケーション力のある同僚がいると、自分と比較して「私はなんてコミュニケーション力がないんだろう…」のように落ち込むこともありますよね。
しかし、介護職としてこの問題と向き合ってみると、「そもそも視点がずれていないか」という課題にぶつかるのです。本日は、この本質と向き合ったうえで、テーマに回答します。
■デイサービスの利用者さんについてさまざまな視点で考えてみましょう!
●1.どういう思いでデイサービスに来ているか理解できていますか?
カラオケを楽しみにしている方もいれば、友人に会うのを楽しみにしている方、お昼ご飯を楽しみにしている方、リハビリをやりたくて来ている方など人それぞれです。また、本当は行きたくないなどといったマイナスな気持ちを持っている方もいます。
●2.利用者さんの生活スタイルはご存知ですか?
1人で生活されている方、夫婦で生活している方、お子さんの家族と生活している方など利用者さんによって生活スタイルも異なります。これらの背景も理解しておくことができると、どのような悩みを抱えているのか、今何が楽しみなのかなどを知ることにも繋がります。
■利用者さんに共通しているのは「孤独を抱えている」ということ
例えば、夫婦で生活されているとしても「自分は家族に迷惑をかけているのではないか」という負い目を抱えていたり、お子さん夫婦と生活している方は、「お子さん夫婦は外出していることが多く、家で1人の時間が多い」と寂しさを感じていたりします。
私の経験でこのようなことをお話ししている利用者さんがいました。
「朝起きると息子夫婦はもう仕事に出ていていない。デイサービスに行って帰ってもまだ仕事から帰らず、配食サービスのお弁当を一人で食べて寝る生活なんだ。」
このように、利用者さんの多くは何かしらの孤独を感じながら生きていることがほとんどなのです。
■話し相手になることを大切に!
なんとなく気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、「どのような話のネタが受けるのか?」ではなく、普段話す相手がおらず孤独感を抱えている場合が多いため、「どうやって話を聞くか」「何を聞くか」が重要なのです。
では、どのように話を聞いていけばよいかというと、まずは明るく元気に挨拶をすることから始めてみましょう。印象がよい人と思ってもらえるだけで、利用者さんの中に「この人に話を聞いてもらいたい!」という気持ちが芽生えます。
また、利用者さんに興味を持つということも大切です。たとえば、「お元気ですか?」「今日は寒いけど、お体大丈夫ですか?」などといった何気ない気遣いから会話は始まります。利用者さんの生活背景に寄り添い、こちらが一方的に話すのではなく、話し相手になるということを大切にしてください。
2.高齢者一人ひとりの個別性を大切にしましょう
■回答者/専門家

アモールファティ代表 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。
そのため、個々が異なる価値観を持っているということを前提に対応していかなければなりません。
■高齢者は演歌が好き、と思い込んでいませんか?

例えば、自分が男性で野球観戦が好きだった場合、「男性利用者さん=野球が好きだろう」と思い込んでしまったりしていませんか?当然のことですが、老若男女問わず、野球が嫌いな方もいれば、野球が大好きな方だっています。
介護施設でいうと、「高齢者は演歌が好きだろう」と演歌を流し続けるデイサービスがよくあります。しかし、ロック音楽は1950年代には誕生していて、演歌ではなくロックが好きな利用者さんや、最近ポップミュージックが好きな方もいらっしゃるかもしれません。
このことから、「年齢や性別にとらわれずに接していくことが大切である」とおわかりいただけるでしょうか。
■会話の内容ではなく、信頼関係を築くことを大切に
コミュニケーションは、あくまで信頼関係を築くためのツールです。固定観念を持たず、利用者さん一人ひとりの背景事情に注意を払いながら、真摯に向き合い続けることで適切なコミュニケーションが行えるようになると思います。
3.デイサービスで盛り上がるために、オンラインやVRを活用してみましょう!
■回答者/専門家

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業、地域包括支援センターにて介護支援専門員の経験あり。 現在は、デイサービス管理者として勤務。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営の経験がある。 すきな食べ物はラーメン。
1対1はまだしも、対複数人に興味を持っていただけるような話のネタを見つけるのはなかなか大変なことですよね。
大人数で思い出をつくるという観点では、外出レクなどがおすすめですが、コロナウイルスの流行以降、外出に対するリスクなどを懸念する利用者さんやご家族も増えており、デイサービスでのレクリエーションや会話内容に悩まれる介護職の方が増えているのではないかと思います。
■おすすめは、参加型の「オンライン旅行」

オンラインレクリエーションの中でも、特におすすめなのは参加型のオンライン旅行です。 その土地のことをきっかけに過去の旅行話に花が咲いたり、さまざまなエピソードを聞くことができたりするでしょう。さらに、その土地のおやつを取り寄せてみたり、食事を作ってみたりすればより楽しみの幅が広がるのではないでしょうか。
また、VRを活用したレクリエーションもこれから増えてくるのではないかと思います。機材を準備する手間やコスト、活用方法や楽しみ方に合う・合わないの個人差はあるかと思いますが、どのようなツールがあるのか、どういったことなら利用者さんに興味を持っていただけそうかなどを調べてみるとレクリエーションの幅が広がり面白いと思います。
■抽象度を高く、誰もが参加できる話題を
質問者さんも一緒に楽しめることを、ぜひ探ってみてください!
4.デイサービスで高齢者に喜んでもらう会話のきっかけ7選

■回答者/専門家

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
あくまで、私自身の考えで、コミュニケーションに正解はありませんが、お役に立てば幸いです。
■1.花鳥風月を用いて話そう【具体例あり】
介護現場においては、自分が起きてから、事業所に出勤し、利用者さんの目の前に立つまでに目に入った天候や動物、自然の中などからお話しすることをおすすめします。
声かけの例は以下の通りです。
「ときどき吹く風が、少し暑さを和らげてくれますよ。」
「今日も1日暑くなりそうですね。そういえば汗をかきますけど、水分摂れていますか?」
「すずめも電線で休んでましたよ。でも日陰じゃないから暑そうでしたね。」
このように、自分の目に入ったものを、そのまま伝えて会話のきっかけにすると良いと思います。しかし、簡単そうで慣れるまでは意外と難しいと感じる可能性もありますので、日頃から目で見たことを言語化する練習を職員同士や、家族、友人などと練習しておけるとよいでしょう。
言語化する能力が高まると、ケアの申し送りや介護記録の質を高めることにも繋がります。
■2.利用者さんを見て、とにかく褒める【具体例あり】
声かけの具体例は以下の通りです。
「お肌のツヤがいつもより良く感じますね。」
「その服の柄(または色)素敵ですね。個人的に好きな組み合わせです。」
「今日の動きはなんだか昨日よりスムーズですね。」
これらのように、その人の様子からわかることや、良い変化や行動を褒めてみましょう。
褒めることを意識すると、自然と利用者さんの細やかな部分に目がいくようになり、異常時の早期発見や、小さな変化の察知力の向上にも繋がります。
■3.時事ネタやニュース
ただし、時事ネタやニュースを探す際に、政治や宗教などについては、さまざまな考え方を持った方がいるため、個人的にはそこを避けて話題を見つけることをおすすめします。
これを習慣化することは、自分自身の視野が広がることにもつながります。ニュースで自分が知らない内容があれば、ちょっと調べてみるということを毎日、少しずつ行うことで話題に困ることは少なくなるでしょう。
■4.自己開示をして話す【具体例あり】
私は茨城県在住ですが、出身が愛媛県のため、地元の特産にまつわる話や、とりわけ愛媛県と茨城県を比べて「方言」について話をすると盛り上がることが多いです。
具体的な例は以下の通りです。
「ごじゃっぺという言葉の意味が分からなかったです。」
このような方言あるあるを話すと、笑いもあり、利用者さんからも「じゃぁ、いしけーなんて言葉もわかんねーべ。」とお話しいただけることがあります。※
※いしけー:茨城弁で不細工、悪い、ぼろいなどの意味
■5.ご出身や幼少期のことなど昔の話を聞く
話を聞く際は、5W1H(Who・What・When・Where・Why・How)を用いながら話すと、利用者さんも昔のことを思い出しながらさまざまなお話しをしてくださるでしょう。
ただし、本人が話したくなさそうな表情や話し方をしている際には、無理に聞かずに慎重に対応するようにしましょう。
■6.ご家族の話
また、話している利用者さん側が周囲に聞かれたくない場合もありますし、周囲の利用者さんで家族の話を聞きたくない方もいらっしゃる場合があります。さまざまな部分に配慮しつつ会話を進めましょう。
■7.趣味や特技の話
さらに、趣味や特技ではありませんが、生活歴を知ったうえで、あえて現在の状況に鑑みて、昔のことを聞くと、とてもイキイキとお話してくれることもあります。
例えば、手を見て、触れながら「○○さん、とても立派な手をしてますね。これはいっぱい働いた証拠ですよ。どんなお仕事されていたのですか?」とお話しすると、自分が一生懸命働いていたときのことを笑顔でお話ししてくれる場合があります。
こういった話に共感や承認、傾聴の姿勢を示すことで、利用者さんとの関係性が構築されていくでしょう。
■まとめ:コミュニケーションに絶対的な正解はない
少しでも参考になれば嬉しいです。
デイサービスにおける利用者さんとの信頼関係の築き方とは
しかし、コミュニケーションがとれるようになっても、それが信頼関係に繋がっているのか不安を感じていたり、利用者さんを傷つけないためには、どこまでなら踏み込んで話していいのか迷っていたりする方も多いのではないでしょうか。 ここからは、利用者さんとの信頼関係の築き方について専門家の先生に回答いただきます。
■回答者/専門家

ワ☆ノベーション代表 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA) MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士 総合心理教育研究所学術客員研究員
■信頼関係を築くために意識すること3つ
→相手に関心をもつ。尊重し理解する。約束を守る。
2.会話
→笑顔で挨拶をする。こまめに声かけをする。感謝を伝える。共感し話を聴く。丁寧に説明をする。
3.行動
→丁寧に接遇する。相手のペースにあわせる。主体的に行動する。
■緊張して上手に会話ができない場合の対処法3つ
緊張の解消については、さまざまな方法がありますが、ここではすぐに解決できそうな解決方法を3つお伝えします。
→今は慣れる時期、このままで大丈夫と自分にささやいてみましょう。
2.緊張していても実は上手に会話ができていないか確認する
→緊張していても、落ち着いて会話できていることも必ずありますので、周囲に確認してみたり、振り返りを行ってみたりしましょう。緊張していても会話ができていて、利用者さんに支障がなければ問題ありません。
3.自分の中でコミュニケーションのゴールはどこなのか決め、点数化する
→リラックスして笑顔でコミュニケーションをとることを目標としたのであれば、これができていて10点、緊張はしていたけど見た目には出ていなければ8点、笑顔はできているのであれば6点など自己分析をしてみましょう。
最後に:利用者さんに寄り添い、自分らしい会話術を見つけましょう!
共通して言えることは、コミュニケーションにおいて正解はないため、深く考えるのではなく利用者さんに寄り添う気持ちが大切であるということです。そして、コミュニケーションは回数を重ねるにつれて慣れていくものです。今は苦手意識があっても挑戦し、少しずつスキルアップを目指しましょう。
■マンガでまとめ♪デイサービスで高齢者にウケるネタ


マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
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ささえるラボ編集部です。
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