本日のお悩み
デイサービスに勤務しているのですが、利用者さんとの話のネタに困ってしまいます。
高齢者にどんなネタがウケるのか、どういう話題だと楽しんでもらえるのか教えてください。
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
■今回は、4人の専門家が回答します!
ひとつのお悩み相談に対して、4人の専門家に回答していただきました。
それぞれの視点や考え方を、ぜひ参考にしてみてください!
~おしらせ~
「具体的にどんなことを話せばいい?高齢者に喜んでもらう会話のきっかけとは」
を追加しました!
コミュニケーションの基礎を理解した上で
・利用者さんとの会話のきっかけとなる3つの話題
・利用者さんと、イキイキ盛り上がって話せる質問
について回答しています!
回答の内容ダイジェスト
・伊藤浩一さん
デイサービスのご利用者に共通して言えることは、「みんな孤独を抱えて生きている」ということではないでしょうか。どんな話のネタがウケるか?と考えるのではなく、話を聞いて差し上げましょう。
明るい挨拶を心がけ、ご利用者に興味を持って話し相手となることを大切にしましょう。
・羽吹さゆりさん
私たちには「思い込み」があることを自覚しておきましょう。例えば、男性のご利用者が野球好きとは限らないし、高齢者だからといって全員が演歌が好きとは限りません。
重視するべきは会話の内容ではなくて、職員がお一人おひとりに真摯に向き合い、信頼関係を築きあげていくことです。
・古畑佑奈さん
室内での楽しみをつくる手段として、オンラインレクリエーションが増えてきています。特におすすめなのは、参加型のオンライン旅行です。
何に興味を持つかは人それぞれですが、抽象度を高くして「食」や「自然」といった大きなテーマにすると、誰もが何かしらのエピソードをお持ちではないかと思います。
・脇 健仁さん
コミュニケーションの前提などはご理解いただいた上で、では具体的にどのように切り出せばよいのか、私見と体験談から3つの会話のきっかけを紹介いたします。
「何を話せば良いか」ではなく、「何を聞けばいいか」で考えてみましょう
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
デイサービスで勤務していると日替わりでご利用者は変わりますし、毎日新聞に目を通すなど社会情勢に詳しい方もいたりすると話題が難しくて返せない。
また、コミュニケーション力のある同僚なんかがいると自分と比較して「なんて私はコミュニケーション力がないんだろう・・」なんて落ち込むこともありますよね。
でも「そもそもこれ視点がずれていませんか?」というテーマで回答してみます。
■ご利用者について考えてみる
まずは、この質問をくださったあなたに質問です。
デイサービスを利用する方は、どういう思いでデイサービスに来てると理解されていますか?
カラオケを楽しみにしている人もいれば、お友達に会うのを楽しみにしている人、お昼ご飯を楽しみにしている人、リハビリををやりたくてきている人、それは人それぞれです。
ご利用者は、どういう背景で生活されているんでしょうか?
お一人で生活されている人、お二人ご夫婦で生活してる人、お子さんのご家族と一緒に生活している人、その生活スタイルもみんなそれぞれですよね。
■利用者さんに共通しているのは「孤独を抱えている」ということ
しかし、共通して言える事は「みんな孤独を抱えて生きている」ということではないでしょうか。
例えば、夫婦で生活されているとしてもやはり家族に自分は迷惑をかけてるんじゃないかなという負い目があって生活している可能性があります。
またお子さん夫婦と生活しているとしても日中お子さん夫婦は仕事に出てることが多く、実は家でも行き違いで一緒には住んでいるけど実質一人で生活されているという方も多いです。
私の経験でこんなことをお話ししている方がいました。
「朝起きると息子夫婦はもう仕事に出ていていない。デイサービスに行って帰ってもまだ仕事から帰らず、配食サービスのお弁当を一人で食べて床に着く生活なんだ」
つまり、淋しいんです。孤独を感じて生活している方が多いのが現実なんです。
■話し相手になることを大切に
では、本題に戻ります。「どんな話のネタが受けるのか?」
違いますよね。
普段話す人がいないんだから話を聞いて差し上げることが重要ではないでしょうか。
ではどうやって話を伺うか?
まず明るく元気に挨拶することじゃないでしょうか。
そこからこの人に聞いてもらいたいという気持ちが起きるのだと思います。
また、ご利用者に興味を持つと言うことも大切です。
例えば「元気ですか?」や「寒かったけどお体大丈夫ですか?」とか何気ない気遣いからから会話が生まれると思います。
ご利用者の生活背景に寄り添い、そして話相手となることを大切にしてください。
一人ひとりの個別性を大切にしましょう
アモールファティ代表 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。
デイサービスに参加しているご利用者の方々は、それぞれ生きてきた時代背景や社会経験、生活歴が違います。
そのため、それぞれが個々の価値観をもっていることを前提に対応しなくてはなりません。
どなたが何に興味関心を持つかは、私たち同様、ご利用者さまごとに異なるのです。
■高齢者は演歌が好き、と思い込んでいませんか?
ここで気をつけなければならないのは、私たちには「思い込み」があること。
例えば、自分が男性で野球観戦が好きだった場合、「男性ご利用者=野球が好きだろう」と思い込んだりしていませんか?
当然のことですが、野球が嫌いな男性もいれば、野球が大好きな女性だっています。
高齢者は演歌が好きだろうと演歌を流し続けるデイサービスがよくありますが、ロック音楽分野が流行したのは1950年台です。
エルビスプレスリーやビートルズの音楽に魅了されてきたご利用者だって、中にはいるかもしれませんよね。
■会話の内容ではなく、信頼関係を築くことを大切に
楽しい話題づくりも、デイサービスに通い続けていただくには勿論大切なことではありますが、重視するべきはその内容ではなくて、職員の皆さんとの信頼関係を築きあげていくことです。
コミュニケーションは、あくまでもそのツール。
ご利用者一人ひとりに長い人生の歴史があり、誇りや大切な思い出、こだわりにそれぞれの意味があり、全員が異なることに十分に注意を払いながら、職員がお一人おひとりに真摯に向き合うことが、今回のご質問の答えに繋がるのではないかと思います。
オンラインやVRの活用で幅が広がります!
話のネタ問題に頭を悩ませるお気持ち、お察しします。
1対1はまだしも、対複数人に興味を持っていただけるような話のネタを見つけるのはなかなか大変なことですよね。
特に、感染症対策としてなかなか外出もしづらい状況です。
デイサービスしかり、レクリエーションで悩まれている方は多いのではないかと思います。
■おすすめは、参加型の「オンライン旅行」
そんな中、室内での楽しみをつくる手段として、オンラインレクリエーションが増えてきています。
体操や、お笑い、楽器演奏など多様なプログラムがあり、単に映像を流すのとは異なり、双方向でやりとりが出来るところに魅力があると思います。
特におすすめなのは、参加型のオンライン旅行です。
その土地のことをきっかけに旅行話に花が咲いたり、いろいろなエピソードを聞けたり。
例えばそのあと、その土地のおやつを取り寄せてみたり、食事を作ってみたりすればより楽しみの幅が広がるのではないでしょうか。
また、少しハードルは上がってしまいますが、VRを活用したレクリエーションもこれから増えてくるのではないかと思います。
機材を準備する手間や、合う、合わないの個人差はあるかと思いますが、どのようなアプリがあるか、どういったことなら興味を持っていただけそうかなど調べてみると面白いですよ。
■抽象度を高く、誰もが参加できる話題を
何に興味を持つかは人それぞれですが、抽象度を高くして「食」や「自然」といった大きなテーマにすると、誰もが何かしらのエピソードをお持ちではないかと思いますし、そのお一人ずつのエピソードから話題が広がっていくと、自分の新たな気づきにもつながるのではないかと思います。
質問者さんも一緒に楽しめることを、ぜひ探ってみてください!
具体的にどんなことを話せばいい?高齢者に喜んでもらう会話のきっかけとは
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
コミュニケーションの前提などはご理解いただいた上で、では具体的にどのように切り出せばよいのか、私見と体験談から紹介いたします。これが正解というわけではないので自己責任の下でお願いしたいところですが、一つでもお役に立てれば幸いです。
■会話のきっかけ ①花鳥風月
声かけの例
自分が起きてから、事業所に出勤し、利用者の目の前に立つまでに目に入った天候や動物、自然の中からお話することをお勧めします。
「○○さん、おはようございます。今日は晴れて、とてもきれいな空ですよ。雲の形がソフトクリームのようにもこもこと出てました。」
「ときどき吹く風が、少し暑さを和らげてくれますよ。」
「今日も一日暑くなりそうですね。そういえば汗をかきますけど、水分摂れていますか?」
「すずめも電線で休んでましたよ。でも日陰じゃないから暑そうでしたね。」
など自分の目に入ったものを、そのまま伝えて会話のきっかけにすると良いと思います。
日頃から目で見たことを言語化する練習は、ケア報告や記録の力を高めることにも役立ちますので、ぜひ職員同士やご家族などと練習してみてください。
■会話のきっかけ ②利用者さんをみて、とにかく褒める
声かけの例
利用者さんとお会いしたときに、どんな小さなことでもよいので褒めることからスタートしてみてはいかがでしょうか?
「おはようございます。なんだか表情が明るいですね。いいことありました?」
「お肌のツヤがいつもより良く感じますね。」
「その服の柄(または色)素敵ですね。個人的に好きな組み合わせです。」
「今日は姿勢が良く感じます。とても若々しく感じます。」
「今日の動きはなんだか昨日よりスムーズですね。」
などその人の見た目や動作、行動を褒めてみましょう。
褒めようと思うと、自然と利用者さんの細やかなところを日常的に、一生懸命観察すると思います。そこで異常時の早期発見やちょっとした変化を察知できる力が身に着くと思います。
■会話のきっかけ ③時事ネタやニュース
朝のルーティンとして、テレビやスマートフォン、新聞でニュースをみて、一日の話題を3つ見つけてから出勤してみましょう。
その中で政治などについては、色々な考え方を持った方がおり、場合によっては相手の政治信条にとって不利益な情報となる可能性があるので、個人的にはそこを避けて話題を見つけることをお勧めします。
これは、自分自身の視野が広がることにもつながります。ニュースで自分が知らない内容があれば、ちょっと調べてみるということを毎日、少しずつ行うことで話題に困ることは少なくなるでしょう。
■さらに喜んでもらうためには「自己開示」もしましょう!
上記のような声掛けをきっかけに少し相手の心がほぐれたときに、「自己開示」をすると喜ばれます。
私は現在茨城県在住ですが、出身が愛媛県ですので地元の特産にまつわる話や、とりわけ愛媛県と茨城県を比べて「方言」について話をすると盛り上がることが多いです。
例えば、「最初に茨城に来た時に、みんな語尾が尻上がりで、ちょっと怒られてるのかと思っちゃいました。」「ごじゃっぺという意味が分からなかったです。」などは笑いもあり、利用者さんからも「じゃぁ、いしけーなんて言葉もわかんねーべ。」とお話しいただけます。(いしけー:茨城弁で不細工、悪い、ぼろいなどの意味)
■利用者さんと、イキイキ盛り上がって話せる質問とは?
また、生活歴を知った上で、あえて現在の状況に鑑みて、昔のことを聞くと、とてもイキイキとお話してくれることもあります。
例えば、手を見て、触れながら「○○さん、とても立派な手をしてますね。これはいっぱい働いた証拠ですよ。どんなお仕事されていたのですか?」とお話すると自分ががんばっていたときのことを笑顔でお話してくれることがあります。
そこで共感しながら、自分もその当時の様子を思い浮かべながら、映画のワンシーンを想像して、興味を持って聞かせていただくことにしています。
■コミュニケーションに絶対の正解はない
このコミュニケーションなら間違いないなんてことは言えませんが、相手をしっかりと観察し、ちょっとした変化に気が付けるよう意識を持ち、相手に興味を持って、「教えていただく」姿勢で取り組んでみると良いのではないかと思います。
少しでも参考になれば嬉しいです。
利用者さんとのコミュニケーションに関連したお悩み
信頼関係の築き方に悩んでいます…
利用者さんとの信頼関係の築き方に悩んでいます。先輩に相談すると、最初は慣れていけばいいよと言われるけど緊張してどうもうまく会話ができません。
たとえば家族にいろいろな事情がある利用者さんと、家族が仲いい利用者さんの間で会話に入るときなど、傷つけないか気を使ってしまいます。
専門家からの回答
■いまのままで大丈夫!!スモールステップで、できることを増やす。
回答者
ワ☆ノベーション代表 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA) MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士 総合心理教育研究所学術客員研究員
ご相談ありがとうございます。相談内容について整理させていただきます。
利用者さんとの信頼関係の築き方、利用者さんを傷つけないように気遣いしているが緊張するとうまく会話ができないことについて悩んでいるのですね。相談者さんはすでに利用者さんや家族を傷つけないように気遣いされていて信頼関係の構築中です。他者を尊重していることは素晴らしいことです。先輩にも相談されていて関係性ができていて良いですね。
■利用者さんと、どう信頼関係を築く?
信頼関係が築けている状態とはどのような状態なのか。そのうえで信頼関係があると相談者さんにとってどのような変化があるのか具体化して考えてみましょう。
信頼関係を築くために意識すること
利用者さんと信頼関係を築くために下記を意識し実践してみてください。
・心構え:相手に関心をもつ。尊重し理解する。約束を守る。
・会話:笑顔で挨拶をする。こまめに声かけをする。感謝を伝える。共感し話を聴く。丁寧に説明をする。
・行動:丁寧に接遇する。相手のペースにあわせる。主体的に行動する。
■緊張するとうまく会話ができなくなる…解決法は?
今の現場でお仕事されてどのくらいの期間でしょうか。新しい環境に慣れるまでは緊張しますし、無意識に肩に力が入りやすいものです。環境に慣れ、できる仕事が増えてくれば心に余裕ができ、落ち着いて会話ができるようになります。会話と同じぐらいに非言語(態度)も大切です。
すぐできそうな解決法3つ
・今は慣れる時期、このままで大丈夫と自分にささやいてみましょう。
・緊張していても、落ち着いて会話できていることも必ずありますので、そこをしっかり見つけていきましょう。緊張していても会話ができていて、相手に支障がなければ問題ありません。
・上手く会話するとはどういうことか、目指す状態(ゴール)を具体化してみて、そのうえでスケーリング(点数化、イメージはドラゴンボールのスカウター)してみましょう。
たとえば、リラックスして笑顔で会話ができる状態を10点として現状は5点。
5点の内訳は緊張していても会話はできる。落ち着いて笑顔で会話している時もある。他者に気遣いをしている。利用者さんが笑顔になるときもある。
では、5.5点~6点になるには何をすればいいか?
深呼吸して口角を上げて笑顔で会話をしてみるなど。スケーリングは手軽にできますので緊張についてもしてみてはいかがでしょうか?
まずは、笑顔で挨拶をしていきましょうね。応援しております!!
ささえるラボ編集部です。
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