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資格取得費用免除後の退職希望で思わぬトラブルに。対策は?

資格取得費用免除後の退職希望で思わぬトラブルに。対策は?

最近では、資格取得のサポートが充実している介護事業所が増えてきました。働く側も雇用側も予期せぬトラブルにならないように、注意したいですね。社労士の先生に資格取得関連のトラブルに関して解説いただきました。【執筆者:社労士 山本 武尊】


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資格取得費用免除後の退職希望で思わぬトラブルに。対策は?

本日のお悩み

退職申し出をしたら、実務者研修の資格取得費用を返金請求されました。
事前説明はなく、就業規則記載なし。労働契約の話も、書面も交わしておりません。返金義務はありますか?

解説者/社労士

山本 武尊

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/23

おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級 プロフィール 大学(福祉学)卒業後、大手教育会社を経て、介護業界へ転身。 介護業界に関わる人の優しさに触れると共に、低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため社会保険労務士の資格を取得し、2021年に開業。 地域包括支援センターでセンター長として長年勤務した経験を活かして、介護現場の最前線で活躍する事業所と人をサポートしている。 また、介護関連の執筆・監修者としての活動や介護事業書向けの採用・定着・育成・組織マネジメントなど、介護経営コンサルタントとしても幅広く活動中。

はじめに

ご質問・ご相談を頂きありがとうございます。
最近では資格取得のサポートが充実している介護事業所も増えてきましたね。

いくら素晴らしい取り組みをしていても、今回のように契約した内容が明記されていないことで会社と従業員の思わぬトラブルを生んでしまう事もあります。
このようなトラブルを未然に防ぐこと、そして実際にトラブルになった場合の対処法について考えてみたいと思います。

相談への回答

結論から申し上げますと、今回のケースでは返金義務は発生いたしません。
ご相談内容にあった「労働契約」と「就業規則」に退職時は返済義務がある等の記載がなかったことがポイントです。

「労働契約書」や「就業規則」は皆さんにとって聞きなれた言葉だと思います。
では、改めて実際の労働環境の中でどのような効力を持っているのか考えてみましょう。

労働契約書と就業規則とはどんな効力がある?

● 労働契約書とは?

労働契約とは「個々の労働者が労働を提供し」「会社がそれに対して報酬を支払う」という約束を結ぶことを言います。

約束事なので労働契約自体は口頭でも成立します。
しかし、後のトラブルに繋がらないよう労働基準法では下記のように明示を義務付けています。

労働条件の明示義務
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、騒動時間その他の労働条件を明示しなければならない。
※「雇用契約書」との違い
似ている言葉で雇用契約書というものもあります。こちらは民法で定められた雇用契約を締結しその内容を書面化したもので、作成は任意です。

● 就業規則とは?

就業規則とは、簡単に申し上げますとそれぞれの会社の「ルール本」です。
労働条件や職場の環境・制度を規定することで会社と従業員のトラブルを防いでくれます。

もちろん、それぞれの会社といっても労働者の不利益になる規定は認められておりません。
就業規則に記載されることは、労働基準法と労働協約の規定を下回らない内容であることが必要です。また労働基準法第89条では「常時10人以上の使用者を雇用する事業主」に作成と届出、従業員への周知を義務付けています。
10人未満の会社の場合は任意での作成となりますが、従業員と会社の双方の安心のために作成しておくことが望ましいでしょう。

●労働契約書と就業規則の効力

労働契約書も就業規則も労働基準法に基づく法的効力が発生します。

両社とも労働基準法の内容を下回る規定については無効となり、場合によっては罰則が科せられることもあります。
また、労働トラブルを招き裁判に発展する事もあります。会社側の違反が認められれば社会的な信頼の損失も大きいでしょう。
従業員が就業規則に違反した場合は、就業規則に定められている懲戒処分を受ける可能性もあります。
皆さんの会社の実態はどうでしょうか?

就業規則で定められていない慣習や制度が蔓延していることや、そもそも就業規則がない会社も多いと思います。今回の相談ケースのように望んでいないトラブルに巻き込まれてしまう事もあるでしょう。
ではそのような実態に対してどのように対応していくべきなのでしょうか。

労基署に駆け込んだり裁判を起こし正しさを主張していくのでしょうか。それとも…

今回のケースで言えば、裁判を起こせば質問者様に返還義務はないと証明されます。しかし「裁判起こす=会社と争う」という事です。争いには時間、費用、体力、精神的なエネルギーも必要です。
裁判を起こすことで新たなトラブルが発生する事もあります。

働きながら資格取得した質問者様は、意欲の高い従業員であり、会社としても大切にしなければならない存在であったと思います。それを怠った会社のためにエネルギーを割くよりも、もっと質問者様の意欲が守られる職場を探すためにエネルギーを使われることをおすすめします。

トラブル回避のために

契約の重要性を意識しましょう

法律に則していない実態を抱える会社は残念ながら多く、せっかく転職をしても再びそのような会社に出会ってしまう恐れもあります。
このような状況に陥らない為に、就業規則や労働契約の内容を確認し、そこに明示されていない約束事は避けるようにしましょう。採用面接の時点で、就業規則の有無を確認したり、気になることについて予め聞いておいても良いかもしれません。自分の身は自分で守るということでもあります。

労働者の安全と安心を守れる労働契約と就業規則の作成しましょう

もちろん、会社側も就業規則と労働契約が実態に即しているか管理し、労働者が安全に働く事の出来る環境整備への意識を強く持って頂きたいです。
簡単にできる事ではありませんので、私ども社労士にご相談頂くことも検討してみてください。会社の実態や最新の法律に基づく就業規則をご提案させて頂きます。

さいごに

今回の質問者様は突然のトラブルで戸惑われ、悔しい思いをされたと思います。
今後、転職を選択されたのちはぜひこのコラムの内容を思い出して頂き、よりご自身にあった職場と出会っていただけたら幸いです。
せっかく取得できた資格をもって、キャリアを重ねご活躍されることを心からお祈りしています。
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この記事のライター

おかげさま社労士事務所 代表
元地域包括支援センター センター長

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