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今回は、福祉用具専門相談員という職種やその資格に興味がある方に向けて、主な仕事内容や、資格の取得方法と難易度、取得にかかる費用、平均給与、向いている人の特徴といった基礎情報を解説します。
福祉用具専門相談員とは
■そもそも福祉用具とは
主な福祉用具には、介護ベッドや車椅子、歩行器、歩行補助用のつえ、手すり、移動用リフトなどがあります。
※出典:福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律 第一章 総則 第二条
■福祉用具専門相談員は、利用者さんの適切な福祉用具利用をサポートする!
代表的な福祉用具専門相談員の活躍の場は、福祉用具貸与・販売事業所です。福祉用具貸与・販売事業所が事業者として介護保険の指定を受けるためには、福祉用具専門相談員を常勤換算法で2人以上と、管理者を常勤専従で1人を配置しなければなりません。
なお、福祉用具の貸与・販売は、介護保険サービスのなかの「居宅介護サービス」の一種です。居宅介護サービスとは、主に自宅で暮らす要介護・支援者のためのサービスで、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーが作成するケアプランをもとに提供されます。
福祉用具専門相談員の仕事内容
ここでは、代表的な職場である福祉用具貸与・販売事業所における福祉用具専門相談員の主な仕事内容を紹介します。
2.福祉用具の選定・福祉用具利用計画書の作成
3.福祉用具の調整・利用方法の説明
4.福祉用具の点検・モニタリング
■1.ヒアリング・情報収集
そのためのヒアリングや情報収集は、利用者さんの自宅を訪ねて行うのが一般的です。福祉用具専門相談員は、利用者さんやそのご家族の要望や困りごとを聞き取り、心身の状態や要介護レベル、住宅の構造、生活環境などを調査します。
■2.福祉用具の選定・福祉用具利用計画書の作成
その後、福祉用具専門相談員は、福祉用具利用計画書に基づいて、利用者さんに福祉用具を提案します。提案のために利用者さんの自宅を訪問する際には、ケアマネジャーが同行することもあります。福祉用具を提案した後、利用者さんとその家族が同意すると、福祉用具利用計画書が交付され、福祉用具の提供がスタートします。
■3.福祉用具の調整・利用方法の説明
利用者さんが安全に福祉用具を使えるように適切な使用方法を説明するのも、福祉用具専門相談員の仕事です。
■4.福祉用具の点検・モニタリング
福祉用具専門相談員によるモニタリングの結果は、担当のケアマネジャーとも共有されます。福祉用具の見直しが必要になった場合には、ケアマネジャーや担当の介護職、リハビリ職、医療職などとともにサービス担当者会議に出席して意見交換をすることもあります。
福祉用具専門相談員の1日のスケジュール

そのほか、社内外の会議への出席、福祉用具サービス計画書の作成といった事務作業も、日常的に行う業務です。
福祉用具専門相談員の資格を取るには
資格取得に必要な講習の概要、取得の難易度など、福祉用具専門相談員を目指すうえで確認しておきたい情報を紹介します。
■福祉用具専門相談員指定講習の受講要件
都道府県のホームページには講座を実施している事業者の一覧が掲載されていることが多いので、受講を検討する際には確認してみましょう。なお、受講のための要件は特にありませんが、なかには、講習の実施機関の判断で要件が設けられているケースもあります。

■2025年度(令和7年度)を目途にカリキュラムの見直しが行われます
ただし、2025年度中は新カリキュラムへの移行期間とされ、上記カリキュラムも指定講習として認められる見込みです。2026年度以降は、全ての指定講習事業者が新カリキュラムで講習を実施することになります。※
※参照:厚生労働省 福祉用具専門相談員の新たな指定講習カリキュラムの適用開始時期について
■資格取得の難易度
講座の内容をしっかり聞いていれば、まず落ちることはないといわれています。万が一、合格点に達しなかった場合でも、補講や再試験を受けられるケースが多いようです。
■取得にかかる費用
特定一般教育訓練制度の支給を受けるには、受講前にハローワークで受給資格を確認したうえで、講座を修了後、ハローワークで支給申請を行う必要があります。給付条件をはじめ特定一般教育訓練制度の詳細は、厚生労働省のホームページでご確認ください。※
※厚生労働省 教育訓練給付制度
■講習を受けなくても業務にあたれる場合も
現役の介護職で、「当面は介護職として働きたいけれど、将来の選択肢として福祉用具専門相談員になることも視野に入れている」という人は、介護福祉士の資格取得を目指すとよいでしょう。
※参考:厚生労働省 老健局 「福祉用具・住宅改修」
福祉用具専門相談員の資格を取るメリット

2.介護の仕事に役立つ
3.採用で有利になる場合がある
■1.仕事の選択肢が広がる
また、福祉用具貸与・販売事業所のほかにも、福祉用具メーカーや住宅メーカー、リフォーム会社など、福祉用具に関する知識を持つ人を求めている職場は少なくありません。福祉用具専門相談員の資格があれば、仕事や職場の選択肢が広がります。
■2.介護の仕事に役立つ
利用者さんの体の状態が変化して、今使っている福祉用具が合わなくなったという場合にも、介護職が担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に共有すれば、いち早く見直しにつなげることができます。
■3.採用で有利になる場合がある
介護従事者が介護業界で転職する場合、介護の資格とあわせて福祉用具専門相談員の資格を持っていると、希望条件に合う職場で採用されやすくなるでしょう。
福祉用具専門相談員が活躍する場所
2.福祉用具メーカー
3.住宅メーカー・リフォーム会社・工務店
4.介護施設・事業所
5.ホームセンター・ドラッグストアなど
■1.福祉用具貸与・販売事業所
福祉用具貸与・販売事業所には、福祉用具専門相談員の資格を持つ人を2人以上配置することが法律にで義務づけられており、多くの事業所が福祉用具専門員の求人募集を出しています。また、福祉用具貸与・販売事業所では、納品や営業で利用者さんの自宅、居宅介護支援事業所などを車で訪問する機会が多いため、採用条件として、福祉用具専門相談員の資格とともに普通自動車免許を求められるケースが一般的です。
■2.福祉用具メーカー
求人募集時に、メーカー側が、福祉用具専門相談員の資格があることを希望条件として提示する場合もあるでしょう。
■3.住宅メーカー・リフォーム会社・工務店
福祉用具専門相談員の資格があれば、顧客に対して、専門知識をもとにリフォームのアドバイスをすることができます。なお、リフォーム関連の業種に従事するなら、福祉用具専門相談員に加えて、福祉住環境コーディネーターの資格取得を検討するのもよいでしょう。
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障害のある方に住みやすい住環境を提案する職種で、東京商工会議所が試験の実施や資格の認定を行っています(詳細は後述)。
■4.介護施設・事業所
また、介護施設・事業所の職員が、スキルアップや給与アップなどを目指して、福祉用具専門相談員の資格を取ることもあるようです。介護職としてのキャリアプランを立てる際に、興味があれば検討してみてください。
■5.ホームセンター・ドラッグストアなど
こうした店舗では、福祉用具の選び方や使い方を来店客にアドバイスできる人材として、福祉用具専門相談員を採用する場合があります。
福祉用具専門相談員の平均給与
これらの資格別平均年収を確認すると、以下のグラフのように資格や職種によって金額が大幅に異なります。そのため、この数字はあくまで参考値で、勤務地や勤務先、所持している資格などによって平均年収は異なると言えるでしょう。※
※厚生労働省 職業情報提供サイト 福祉用具専門相談員

※参考:厚生労働省 職業情報提供サイト 保健師(保健師)
※参考:厚生労働省 看護師の平均賃金(役職者除く)(月収換算)(看護師)
上記3サイトをもとに作成
福祉用具専門相談員に向いている人の特徴
2.体力のある人
3.観察力がある人
4.知的好奇心が強く、勉強熱心な人
5.営業職、介護職の経験がある人
■1.コミュニケーション力がある人
そのため福祉用具専門相談員には、コミュニケーション力や相手の状況や気持ちを想像する力が求められます。また、一種の接客・営業職なので、人あたりがよく、人と話すのが好きで、細やかな対応ができるタイプの人が適しています。
■2.体力のある人
しかし、福祉用具専門相談員の業務の中心は、利用者さんの自宅や介護施設・事業所など、複数の営業先への外回りで、決してデスクワーク中心の職種ではありません。また、福祉用具には、車椅子や電動ベッド、移動用リフトといった大型のものも多く、納品時にはそれらを運ばなければならないこともあります。
福祉用具専門相談員には、体を動かすことが好きで、ある程度以上の体力がある人が適しているといえるでしょう。
■3.観察力がある人
いったん適した福祉用具を納品しても、その後、利用者さんの体調や体の状態が変化した場合には、交換や見直しをしなければなりません。そのため定期的なモニタリングの際にも、福祉用具専門相談員は、注意深く利用者さんの状態を観察する必要があります。
利用者さんの些細な変化を見逃さない観察力のある人は、福祉用具専門相談員に向いているタイプといえます。
■4.知的好奇心が強く、勉強熱心な人
利用者さんに最新情報に基づく提案をするためにも、使用方法を正確に説明するためにも、福祉用具専門相談員は、常に新商品やその機能をチェックしておかなければなりません。知的好奇心が強く、新しいことを学ぶのが好きな人、こまめに情報収集することが苦にならない人は、福祉用具専門相談員向きといえるでしょう。
■5.営業職、介護職の経験がある人
また、介護職としてのキャリアがあると、福祉用具の利用者さんである介護が必要な高齢者への理解があるうえ、コミュニケーション力や観察力が身についているため、比較的スムーズに福祉用具専門相談員の仕事になじめるはずです。営業職・介護職の経験がある人は、福祉用具専門相談員をキャリアチェンジの選択肢の一つとして視野に入れてみるとよいでしょう。
福祉用具専門相談員とあわせて取りたい資格
2.福祉用具選定士
3.福祉用具プランナー
4.介護職員初任者研修
■1.福祉住環境コーディネーター検定試験Ⓡ
福祉住環境コーディネーターが仕事に必要な知識を学ぶことのできる検定試験が、福祉住環境コーディネーター検定試験Ⓡです。出題範囲には、福祉用具に関する知識も含まれます。公式テキストで勉強したうえで、試験を受けて合格することで、リフォーム会社や工務店で働く場合に役立つ医療・福祉・建築についての知識を身につけることができます。
試験には、基礎的な知識の理解度を確認する3級、実務に活かすための知識が身についているかを確認する2級、より高度な知識とプランニング力や調整力が問われる1級があります。3級と2級の試験は7月と11月に、1級の試験は12月に行われます。受験場所は全国各地のテストセンターですが、2級・3級は、自宅や会社のパソコンから受けることも可能です。
受験料は、会場受験の場合は3級7,700円、2級9,900円、1級12,100円です(受験者自身のパソコンから受ける場合は3級5,500円、2級7,700円)。 福祉住環境コーディネーター検定試験Ⓡの詳細や最新情報は、東京商工会議所のホームページでご確認ください。※
※東京商工会議所 福祉住環境コーディネーター検定試験®とは
■2.福祉用具選定士
ベッドや車椅子について学ぶA研修(3日間)と、歩行器、床ずれ防止、リフトについて学ぶB研修(2日間)を受講し、各研修後に実施される筆記試験に合格する必要があります。研修は、東京、名古屋、大阪、福岡の4会場で実施され、A研修に3万円、B研修に2万6,000円の受講料がかかります(同協会の正会員の場合はA研修2万6,000円、B研修2万2,000円)。
研修の詳細や最新情報については、日本福祉用具供給協会のホームページでご確認ください。※
※一般社団法人 日本福祉用具供給協会 福祉用具選定士
■3.福祉用具プランナー
合計100.5時間の福祉用具を必要とする人のために適切な選定、計画の作成、モニター・評価を行うのに必要な知識を学ぶ、福祉用具プランナー認定講習を履修し、修了試験に合格すると資格を取得できます。
福祉用具専門相談員業務または福祉用具関連業務における2年以上の実務経験のほか、複数の条件があります。講習を実施しているのは、テクノエイド協会のほか、全国の複数の研修機関で、開催期間は研修機関により異なります。費用の目安は、研修機関により3万円~4万円程度で、別途eラーニング代が一律2万1,000円がかかります。
福祉用具プランナー認定講習の詳しい受講条件やカリキュラム、最新情報については、テクノエイド協会のホームページでご確認ください。※
※公益財団法人テクノエイド協会福祉用具プランナー情報
■4.介護職員初任者研修
介護職経験がない人は、初任者研修を受けて基礎的なスキルや知識を身につけておくと、福祉用具専門相談員の仕事がしやすくなるでしょう。福祉用具貸与・販売事業所の採用でも有利になるかもしれません。
福祉用具の販売と貸与の違いは?
ただし、便座や入浴用のイス、移動用リフトの吊り具のように、他人が使ったものを再利用することに抵抗感を伴うもの、使用によって形や品質が変化するものについては、例外として、年間10万円を限度に購入費の9割~7割が介護保険により給付されます。
■貸与の対象となる福祉用具
■販売の対象となる福祉用具(特定福祉用具)
また、令和4年4月からは、排泄予測支援機器が、令和6年4月からは、スロープ、歩行器、歩行補助つえが特定福祉用具とされています。
■利用者さんの要支援・要介護度で用具の種類は決定する
一方、販売の対象となる福祉用具については、要支援または要介護の認定を受けた人であれば、上記いずれの購入費も介護保険の支給対象になります。
未経験でも福祉用具専門相談員になれる?
また、なかには福祉用具専門相談員の資格を持っていなくても、入職した後に、働きながら資格を取得できる職場もあります。
まとめ:福祉用具専門相談員は、介護職の将来の可能性を広げる資格
福祉用具専門相談員は、介護職の転職の選択肢としてもおすすめです。福祉用具専門相談員にならない場合でも、講習を受けて資格を取っておけば、学んだ知識を介護の仕事に活かすことができます。福祉用具に関する知識を身につけたい人は、ぜひ資格取得を検討してみましょう。
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