処遇改善のピンハネは本当にある?社労士が対処法も紹介
介護職の待遇改善のため、処遇改善加算・特定処遇改善加算、ベア加算などの施策が行われています。
ところが、ささえるラボには
「施設からもらう処遇改善の金額が安すぎる!」
「もらえるはずなのに、給料が全然増えない!」
「施設が処遇改善やベア加算をピンハネしているのでは?」
などといったお悩み・質問がたくさん寄せられます。
この記事では、社労士資格を持った専門家が、各種処遇改善の制度や「ピンハネされているかも?」と思ったときの対応方法まで解説します。
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処遇改善加算の金額に疑問を感じたら?わかりやすく解説します
執筆者
おかげさま社労士事務所 代表 地域包括支援センター センター長 社会保険労務士・主任介護支援専門員・社会福祉士・介護福祉経営士1級・ファイナンシャルプランナー2級
岸田総理が国の重点施策の一つとして挙げている「保育や介護などの現場で働く人の処遇改善」。そして介護職員の賃金を上げる施策として「介護職員処遇改善加算」というものがあります。
しかし、果たして介護職員の賃金は上がったのでしょうか。中には処遇改善加算の支給がされずに事業者側がピンハネしているなんて噂もあります。
そうした噂やお悩みについて解説をしたいと思います。
■結論:制度上はピンハネできない仕組みになっている
まず先に結論を申し上げると、処遇改善加算等はピンハネできないような制度になっています。しかし、ご自身で支給対象かどうかを確認する必要があると言えるでしょう。
処遇改善加算(概要)について
■そもそも処遇改善とはどんな制度なのか
受け取ったお金は、余すことなく職員に支給しなければならない
処遇改善加算は、読んで字の如く「介護職員の処遇を改善するために事業所に支給される加算」です。
各サービス区分やキャリアパス要件等の適合状況に応じた加算率によって支給される金額が異なります。
この制度で大事なのは「支給された処遇改善加算金は全て介護職員の処遇改善に充てなければならない」ということです。
処遇改善加算は、支給された介護事業所ごとに、どのような形で職員に支給をするかという計画を立て保険者へ提出をします。そしてその年度ごとに、職員への支給実績を保険者へ報告します。
つまり処遇改善加算の原資は全てを使い切る必要があるということです。
■処遇改善には3種類ある
処遇改善加算には、現在3つの種類があります。
なぜ3種類もあるのかいうと、それぞれに目的が異なるからです。
ここでは詳細は控えますが、介護職員処遇改善加算(処遇改善加算)、介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)、介護職員等ベースアップ等支援等加算(ベースアップ加算)があります。
就業規則に支給方法を対象の職員を明記しなければならない
また、処遇改善は、その根拠が就業規則に明記されており、職員に周知されていることが前提となります。
つまりどのような職員が対象で、どういった形で支給されるのかが明記されていなければなりません。
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処遇改善加算の金額に疑問を感じたら チェックする3つのこと
■①自分の職場(事業所)は加算を取得しているのか
そもそも事業所が処遇改善加算を取得していない事業所であれば支給はされません。
まずは自分の職場(この場合は所属する事業所)がそもそも加算を取得しているのか確認しましょう。
■②自分は処遇改善加算の対象者なのか
例えば、介護事業所に勤めてていてもケアマネジャーや介護事務や経営者は基本的には加算の対象外です。(その対象外の人が配分される加算もあります)
ご自身が処遇改善加算の対象者であるのかを確認しましょう。
■③就業規則で支給金額と支給形態を確認
就業規則等にていくら支給され、どういう形態で支給されるのかについて確認をしましょう。
仮に職場で確認が取れないようでしたら、管理者または経営者に回答を求めてください。
あなたが給料が上がっていないと感じる、主な原因4つ
それではなぜ給料が上がったと感じないのでしょうか。理由をいくつか考えてみました。
■①事業所の収入自体が少なく、月の加算額が少額である
処遇改善加算はひと月の介護総報酬額に対して、その何%という形で支給されるものです。つまり事業所の収入が少なれれば、月に分配される処遇改善加算金も少ないということになります。
■②加算額が増えたのに社会保険料(年金・健康保険)も上がったため、手取り収入が少なくなっている
処遇改善加算が分配されていたとしても、同時に社会保険料が上がった場合、その金額ぶんが控除されてしまいます。
額面上の給料の上乗せはあっても、結果として手取りの金額は思ったほど上がったと感じにくいこともあります。
■③ご自身が加算の配分の対象になっていない
処遇改善加算は正職員でもパートでも支給の対象ではあります。
しかし、対象者全員に分配するかは事業所で決めてよいという制度です。
例えばあなたがパート職員であり、勤め先の介護事業所が処遇改善加算を取得していたとしても、支給対象者が正職員のみということであれば、支給はされません。
■④ 賞与や一時金に組み込まれている
処遇改善加算の原資は必ずしも毎月分配する必要はなく、事業所によっては賞与や一時金に組み込まれて支給される事業所もあります。賞与に組み込まれていた場合、月々の賃金は上がりません。(ただしベースアップ加算は除く)
ピンハネされているかも?と思ったときの対応方法3つ
■①就業規則等の確認
処遇改善加算を取得している事業所であれば、その対象者や分配方法の根拠が必ず存在し、周知しているはずです。
入職時に説明をしていなかった可能性があるため、確認してみるとよいでしょう。
■②管理者や経営者への確認
就業規則等に記載がなかった場合は、事業所の管理者や経営者へ聞いてください。
自分は対象になるのか、対象になるのであればいくら、どういう形で支払われるのか、また対象外であればその理由も含めて確認をされるとよいでしょう。
■③場合によっては転職も考えること
それでも根拠の規定が存在しなかったり、対象であるにもかかわらず不支給の理由に納得できない場合があるかもしれません。
残念ですが、その介護事業所で処遇改善加算金が支払われることはありません。
そういう時は、転職も含めて検討をされてもよいかもしれません。
まとめ:安心して長く働くために、金額と支給方法の確認を!
処遇改善加算はピンハネできない仕組みではありますが、配分方法や給与支給の際に詳細が伝えれずにいることも珍しくないかもしれません。しかし本当は介護職員の処遇が改善され、安心して長く働くことができる仕組みを作るための制度でもあります。
今後も介護業界は、介護職を含めた人材不足な状況が続きます。
現場で働く介護職員の皆さんが安心して長く働くことが、利用者さまの利益にもつながると信じております。
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おかげさま社労士事務所 代表
元地域包括支援センター センター長
社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・
ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級