本日のお悩み
未経験の新人で介護の仕事に就いて1ヶ月目です。入社初日からもう辞めたいと思ってしまいました。
働く前に抱いていたイメージとのギャップに悩まれていませんか?
私は介護・福祉業界で20年、500名近くの方の採用に携わってまいりました。
「長く働いて欲しいな」と願い、採用したものの、1か月も経たないうちに退職された方もいらっしゃいました。
そして経験を重ねるにつれ、採用する際に防ぐことができる退職もあることに気づき、それを実践し、成果を出しています。
■採用時にできる離職対策は、正しい介護のイメージを伝えること
その方法は、求職者が抱いている仕事や職場のイメージを伺い、イメージと異なる点も含め、事前に正しく伝えることです。
つまり、就業前に抱いているイメージと就業後の現実のギャップをいかに無くすかが大切だと知り、実践しているわけです。
とりわけ「未経験」の方は「介護」に対するイメージが、「崇高」なものであり、そこで働く方は「天使」のような方であると思っている方もいらっしゃいます。
そして、いざ働き始めてみると、大変な現実を知り、そのギャップに悩み、離職を考える方もいると思います。
■働き始めてから、介護のイメージとのギャップに悩んだ場合は?
働き始める前に介護業界や職場のことを調べておけば、このギャップによる離職の大半は防げるのですが、ご相談者さんの場合は、すでに働き始めていますよね。
では、就労後に、このギャップが原因で悩まれているとすれば、どうすればよいのでしょうか?
私の経験からお伝えしたいと思います。
イメージとのギャップを前向きに捉える
まずは、抱いていたイメージとのギャップを「前向きに」捉えることが出来るか。
どうすればギャップを埋める事が出来るのか。学びや経験を重ねることで解消できるのか。もし、努力や工夫次第でイメージと現実を近づける事が出来るのであれば、そこに挑戦するのも一つの手です。
イメージとのギャップを受け入れる
次に、そのギャップを「受容」出来るか。
私は未経験ならなおさら、この経験を重ねることにより得ることが出来る介護の知識や技術が、今後の人生において糧となることは間違いないと断言いたします。介護や福祉は、生きていく上で不可避のものであります。そして、介護や福祉は自らを成長させてくれる尊い仕事です。
ギャップを受容したうえで、そこにいる価値を見出せるのであれば、もう少し続けてみてはいかがでしょうか。
■それでも悩み続けるなら、転職も視野に入れてみて
そして、最後に。そのギャップを「許しがたい」ものと捉えられるケースもあると思います。
例えば、労働条件、労働環境、人間関係などが上げられますが、前向きに捉えることも、受容することもできない職場が存在するのが現実です(介護業界に限ったことではないでしょうが)。
介護や福祉は、対人援助職です。自分自身の心が整っていないと、継続することが困難な仕事です。
明日に光を見出すことが難しく、辞めたいと悩み続けるのであれば、異業種や別法人への転職も考えていいと思います。その際には、事前の情報収集により、イメージと現実のギャップを小さくすることを試してみてくださいね。
入社1ヶ月の壁
回答者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
1ヶ月目、一番辛い時かもしれませんね。
そして「入社初日からもう辞めたいと思っていた」とのこと。
入社初日も辛いです。
では何が辛かったのか?
今までの経験を踏まえてそのロジックをみてみましょう。
■入職初日、なぜ緊張するの?
まず1日目は、初めての環境、初めて会う職員、初めて会うご利用者、初めて習う仕事。
初めてだらけです。まさに緊張の連続、緊張をストレスと捉えるとストレスマックスの初日です。
ではなんで緊張するのでしょうか?
自分は新しい環境、人間関係に受け入れらえるのだろうか?不安・・・。
→受け入れてもらいたい
→受け入れてもらうためには好印象でいたい
→失敗は許されない・・・。
てな感じで、心が引き締まって緩みのない状態で1日過ごします。
これは疲れるし、こんな辛い状態が毎日続くのか?と考えてしまえば、
「もう辞めたい」と思ってしまいますよね。
■緊張状態だった1ヶ月、よくがんばりましたね
でも質問者さんは1ヶ月頑張りました。
おそらく緊張状態を緩和できず、連続して過ごしてしまったのかもしれません。
つまり、ストレスは蓄積され、精神的な疲れも強まっている状態です。
精神的な疲れが強まると、自分に自信がもてなくなり、周りの環境や人から受け入れてもらえていないように思え、孤独感が強くなります。
すると将来に対しても希望が持てなくなり「もう辞めたい」という状況に陥る。という感じではないでしょうか?
また、思考も負のスパイラルになっているため、ふとなんでこんな嫌な状況なのか?と考えた時に「そもそも初日から辞めたかったんだ!」と自分を正当化している状況とも思えます。
■「入社1ヶ月の壁」を越えるために、何ができる?
このロジック、質問者さんだけでなくあらゆる業界で「入社1ヶ月の壁」として起こりうる話しですよね。ではどうすれば良かったんでしょう?
自分でできること
まずは質問者さんの課題。
自分を必要以上に良く見せようと頑張りすぎてませんでしたか?
また、他の職員と自分を比べてしまうことはなかったでしょうか?
未経験で入職すると特に有資格者との動きや知識の差に自分自身を悲観してしまうことがあります。だれも最初からパーフェクトにできる人はいません。
未経験だからこそ見える客観的な視点があります。その視点を大事に経験を積み重ねていくことが大切です。
入職した施設側に課題がある場合も
次に事業者さんの課題。
未経験で入職した質問者さんを放置していませんでしたか?
事業所の理念や職員育成方針などをしっかり説明し、エルダー制(新入社員と年齢が近い先輩職員が教育係としてOJTを行う)などを活用して、メンタル面のフォローも含めた教育体制を実践していますでしょうか?
■もし放置されているなら、転職を。介護事業所は星の数ほどあります!
もし質問者さんが、私がご紹介した課題もなく、メンタルコントロールもしながら前向きに仕事にのぞんでいたにも関わらず放置されている状況でしたら、転職した方が良いかもしれません。
2021年の厚労省発表では、介護サービスの事業所数は、訪問介護が34,825事業所、訪問看護ステーションが11,580事業所、通所介護が24,035事業所、小規模多機能型居宅介護が5,502事業所、介護老人福祉施設が8,234施設などなど星の数ほどあります。
せっかく介護業界に飛び込んでいただいたのですから、ぜひその思いを捨てず、他の事業所さんも当たってみてください。人を大事に頑張っている事業所さんもたくさんありますよ!
福岡福祉向上委員会 代表